コトラー 「消費者エンパワーメント」…マスキングテープのカモ井 

マーケティング2.0では、「消費者志向」だった。
マーケティング3.0では、「消費者主権」、「消費者エンパワーメント」になる。

岡山のカモ井加工紙。
従業員200名ほどの会社だ。
建設や塗装の現場で使われる工業用マスキングテープを製造している。

もとは、「ハエ取り紙」のトップシェアを持っていた会社だが、マスキングテープに転換し、
この分野でも、国内2位のシェアを有している。

2006年に、東京から3人の女性が工場見学に訪れた。
3人は、デザイナー、アーティスト、カフェオーナーという感性あふれる職業の女性たちだった。

彼女たちは、工業用マスキングテープを使って、ノートを装飾していた。
テープを自分の感性を表現する装飾用に使っていたのだ。

好きな長さに切って、どこにでも貼れ、痕を残さず簡単に剥がせるという特性をメーカーの予想外の用途に使っていた。

その上、もっとカラフルな色を作って欲しいという…。
会社は、彼女たちのマスキングテープの使い方に「深い感銘」を受け、共に開発を始めた。

現在では、雑貨、装飾用としてのマスキングテープは、若い女性を中心に静かなブームになっている。
会社では、「何に使うか、決まっていない商品です。使い道は、あなたが決めてください」と言っている。

消費者が、新しい価値を発掘し、さらに、それを使って新たな自分らしい価値を生みだす。
消費者が力を持ち、消費者に力を与える「エンパワーメント」が、今後の企業戦略の特徴の一つにもなるだろう…。